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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(あ)555号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人飯島豊の上告趣意は、違憲をいう点もあるが、結局は単なる法令違反及び事実誤認の主張をいでず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。(国民公園皇居外苑は、元来国有財産であって、国有財産法三条二項二号にいう公共用財産たる行政財産に該当し、その管理及び処分に関する事項は厚生大臣の所管に属し、厚生大臣官房国立公園部長は国民公園皇居外苑を維持管理することをその所掌事務の一つとし、随時その状況を視察し、特にその維持、保存及び使用の適否に注意すべき職責を有することは、国有財産法一条、五条、九条一項、厚生省設置法五条六七号、六条二項、八条一項七号、三項、昭和二六年一二月一八日厚生省訓令二号(厚生省所管国有財産取扱規程)二条、五条一号等の諸規定に徴し明らかである。昭和二四年厚生省令一九号(国民公園管理規則)は、厚生大臣がその所管に属する国民公園皇居外苑等の利用に関し制定した命令であるが、前叙の如く厚生大臣は国民公園皇居外苑に対し一般的管理権を有し、右管理規則はこの一般的管理権に基く管理規定の一端を規定したものに過ぎず、同規則の制定をまたずとも厚生大臣(事務分掌上は、大臣官房国立公園部長)は皇居外苑の維持、保存及び使用の適正を期するため、必要とあらば、厚生大臣の許可を受けていない物品販売業者、写真撮影業者等が皇居外苑に立ち入ることを一般的に禁止する権限を有し、所論指摘の立入禁示の標識は、厚生大臣の権限に属する適法な立入禁止処分を公示する手段に外ならず、厚生大臣において、物品販売業者等が同大臣の許可を受けないで物品販売等の目的をもって国民公園皇居外苑に立ち入ることを禁止する処分をなしたことは右標識の文言自体に徴し明白である。されば厚生大臣の許可を受けないで物品販売の目的をもって国民公園皇居外苑に立ち入ることは、軽犯罪法一条三二号前段にいう「入ることを禁じた場所に正当な理由がなくて入った」罪を構成すること明らかである。)

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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